今こそ演歌を。

 「演歌」って、果たして今のままで良いのか?と思って随分経つ。近年、世間において、「演歌」は往々にしてマイナスイメージで語られてきたような気がする(あくまで個人的な感覚です)。


 ・・・・それは、無理もない話だろうと思う。最近の楽曲のつまらなさは何だ!アレンジも焼き直しの焼き直しではないか(古臭い)!そして、一番大切な部分の”うた(歌唱)”が全然心に響いて来ないではないか!・・・・寂しい限りである(全ての演歌歌手の歌を聴いた訳ではないので、語弊がありますが・・・・。要するに今の状況を憂いている訳ですよ。しかし、当方が無知でしたら失礼!)。


 話は変わるが、私が初めて凄い!と驚嘆し、好きになった演歌歌手は森進一である。98リサイタル「女心」ある時、TVで昔の紅白の映像が流れていた。私はそれをしばらく観ていた訳だが、そこに思いっきり若い森進一が映し出された(白黒でした)のである。演目は、「花と蝶」!のっけから大袈裟な身振りの激烈な歌唱に、こちらはただただ圧倒されてしまった・・・。「なんなんだ一体・・・なんなんだこの歌の力は・・・」。・・・凄かった!なんだかわからないけど凄かった!


 下手すると、思いっきりギャグと捉えられかねない(もの凄く、紙一重でした・笑)ような大袈裟な歌いっぷリ。今、森のものまねをする人の比ではないくらい、顔を歪ませて、激しく、体全体で歌っていた・・・。「全身全霊を込めて歌う」と言うのは、こういうことを指すのだろうなと、ひとりで納得してしまった。その映像を目撃して以来、「森進一は凄い歌手だ」、と私の中に刻み込まれてしまった。


 それに比べ、今の演歌歌手はどうであろう?私の見た限りでは、圭子の夢は夜ひらく?藤圭子RCA BEST COLLECTION全身全霊で歌ってるのかよ、と言いたくなってしまうような、そんな頼りのない面々ばかりである(昔の”大物”歌手たちもしかり!)。演歌歌手としてデビューする人は、何年も厳しい下積み生活を送り、自らの歌唱を鍛え、そして世に出るという。その鍛えに鍛えた歌唱、全身全霊を込めた歌唱を何故しない?時代的に合わないのか?いや、そうではないと思う!演歌とか関係なく、「すげえモンはすげえ!」という聴衆はかならずいる。いや、本当に凄い歌(唱)ひらく夢などあるじゃなしだったら、人々に届かない訳がない!と私は思う。「おまえの歌をぶつけて来いよ!」と言いたい。はっきり言って、時代とか関係ない!(※右上ジャケ写は藤圭子。この人の”うた”は良いです!全身全霊込めてます!そして、演歌にハードコアなものを求めている方には、三上寛がおすすめです(この人は演歌というよりも、”三上寛”というジャンルと言った方が適切か。彼も、藤圭子もレパートリーとしている「夢は夜ひらく」を激烈にカバーしています!右ジャケ写「ひらく夢などあるじゃなし」と、アルバム「BANG!」は必聴!!!!!))
 

 曲が良くないのは、昔から、作曲家があまり変わらないという所が原因だろう。良い曲、良い作詞家・作曲家はどんどん起用すべきだ!大御所作曲家の曲や中途半端なポップス系の作品をもらって喜んでいる場合ではない!それこそ時代錯誤である!もしくは、吉幾三みたいに自分で曲をつくればいい(吉の曲が良いか悪いかは、ここでは言及しませんが・笑)。そして、そろそろ演歌も、時代に即した歌をつくっても良いのではないかと私は思っている(演歌の歌唱法で、リアルな歌を歌ったら面白いとおもうのだけどなぁ!説教臭くなるかって?そんなのやってみなけりゃわからないだろう!演歌は絵空事を歌うためのものではない!)。


 アレンジメントが良くなきゃ、そういうのいったん捨てて、新ひろしとギターIII極端な話、伴奏なし(アカペラ)でやっても良いと思う。さらに、アコースティックギターの弾き語りができる人は”流し”のスタイルでやったらもっと良い。以前TVで観たが、(個人的には好みの歌い手ではないが)五木ひろしの弾き語りは実に素晴らしいものであった(程よく抑制の効いたビブラートが、心のひだに染み入る感じでグッと来るのである。この人は、デカい会場でスケール感たっぷりに歌うよりも、このじわっと染み入るような弾き語りのほうが絶対良い)。そして、作曲家である、船村徹の弾き語りも(本格歌手ではないが)哀感を帯びた良い歌唱であった(他にも、弾き語りが出来る歌手はいるだろうが、”流し”出身である、”御大”北島三郎の弾き語り(かすかにTVで観たような記憶もあるのだが???)はぜひ聴いてみたいものである)。「流し」のスタイルは、”歌本来の魅力”、”歌の力”をわかってもらえる良いスタイルであると思う。


 演歌をよくしたい、という言葉が聴こえてこない現在であるが、皆は演歌に期待などしていないのであろうか?悲しい話である。唯一の明るい話題が「氷川きよし(彼は実力派であり、華がある。スターですね)」だけだと少々さみしい。もっと、どんどん型破りな奴が出て来ないのであろうか?私が観た、若い頃の森進一のような激烈な魂の歌手を、心から待望する!!!こんな今だからこそ演歌を、である。