「Blues Of Life」

 ここのところ、音楽(ドキュメンタリー)映画を見る機会が続いている。先週のジョー・ストラマーの作品から始まり、今週末はラモーンズのドキュメンタリーを観る予定であるのだが、今日は、日本の伝説のロックグループである、ザ・ゴールデン・カップスドキュメンタリー映画「One More Time」を観に行った。


 ザ・ゴールデン・カップスは、存在感のある抜群の演奏力、センスの良い選曲で、R&Bやブルースロックのカヴァー曲をぶちかます日本初の本格的なロックバンドとして歴史的にも評価が高く、海外のロックマニアからも(ファズ使用のガレージパンクとして)人気が高い。実際、この生々しく荒々しいロックのグルーヴ渦巻くカップスのサウンドは今聴いてもぞくぞくするほどカッコ良い。


 カップスがデビューした当時(1967年6月)はGSがブームになり始める頃(絶頂期は1968年)。御多分に漏れず、カップスもGSグループとして売り出される事に。しかも(職業作家による、歌謡曲の)ヒット曲を出したため、一般の人々には(当たり前だが)、当時の人気GSグループとして記憶されている(ごくたまにAMラジオのナツメロ番組を聴くとそこで曲がかかってたりする)。


 しかし、時代の流れでGSとして売り出されたものの、カップスの本質は「当時の最先端のR&Bやブルースロックを演奏する本格派ロックグループ」であったので、実際のライヴ演奏を知っている一部のロックファン(オールドロックファンやGSマニアなど)には「本物」として一目置かれ、その中で語り継がれる存在であった。


 この映画では、カップスが活動していた時代、そして当時「日本の中のアメリカ」であった横浜の本牧(彼らが初期に活動の中心としていたクラブ「ゴールデン・カップ」がある)という特異な場所を通して、どのようにカップスが形作られていったかが、関係者や本人たちのインタビューを通して、興味深く描かれている。もちろんその中で、テレビでは押し付けられたシングル曲(「なんでこんな曲歌わなきゃなんないんだろ」って思っていた(Vo.でリーダーのデイヴ平尾談)という)であるGS歌謡を演奏し(勝手に途中で帰ったりなど、かなり態度悪かったらしい・笑・流石!)、ライヴでは最先端ブルースロックをバリバリ弾きまくるといった、アンビバレンツな活動状況を、当時の映像を交えて紹介している(映画後半は彼らの再結成ライブの模様が繰り広げられる)。


 で、映画の話から突然CDの話だが、この映画に合わせて、カップスのベスト盤が出た(タイトルは「Blues Of Life」)。ルイズルイス加部のうねりまくり、ぶち切れまくるベースランニングに驚愕し、エディ藩のファズ&ブルーズギターに圧倒され、ミッキー吉野のジャジーなオルガンに唸る。本当に凄いバンドがあったものである。その彼らの演奏が思いっきり楽しめる(もちろん他のメンバーの演奏も同様にかっこいい)。


 私はカップスを聴く時は、カップスの本領であるスリルのあるガレージ、サイケな曲ばかりを好んで聴くのだが、気が付くと、いつの間にか「ド」歌謡GSな曲ばかり(しかも同じ曲を何度も!)繰り返し聴いていたりする(あの哀愁漂う歌メロが頭の中をぐるぐると・・・。もともと歌謡曲もGSも大好物なので!)。意外とカップスは歌謡GS曲もイケるのである。「愛する君に」などは歌謡R&Bの名曲であるし、「長い髪の少女」もあの哀愁味がたまらなく、つい何度でも聴きたくなってしまう(ついでに、「♪どおぞぉ〜」と歌いたくなる・笑)。


 このCDはカップス本来の音楽性である、ガレージR&B/ブルースロックナンバーが中心のセレクトだが、ガレージパンク好きも、歌謡GS好きも、どちらも楽しめる(そうでなくても、全ロックファン必聴!!!)彼らの魅力全開の選曲で、演奏も最高なものばかりを集めた素晴らしい内容となっている(曲順も絶妙!)。


 順番としたら、ベスト盤を聴いてから映画を観るのが、良い流れである。映画が何倍も面白くなる!おすすめです!