「エボニーズ」(1st/1973年作品)

 昨日、山下達郎のラジオ番組「サンデーソングブック」をヤボ用により、聴き逃してしまった。というか、その前の週も、であるが・・・。


 番組の内容は、数週に渡り、あのフィラデルフィアの名ソングライター/プロディーサーコンビのケニー・ギャンブル/レオン・ハフの特集、という事であった。


 ・・・聴きたかった。どうしても聴きたかった・・・。多分、「ギャンブル&ハフ」にまつわる濃ゆい話(例えば、ジェリー・ロスとのエピソードとか?)をしながら、達郎コレクションの激レアシングル盤B面しかし美メロ曲などをかけまくるんではないか?という勝手な妄想を膨らましていたのだが、実際は、番組のオンエアー曲リストを見るに(結局、それしか内容はわからず)、60年代から年代順に、ギャンブル&ハフの名曲を紹介していく、という極めてオーソドックスかつポイントを押さえた内容だったようである(これも憶測(すいません・・・それにしても、話した内容がとても気になる。達郎氏の話はとても勉強になるので))。


 しかし、昨日放送の70年代編は、ギャンブル&ハフのフィリーソウルを代表する(ソウル好きでなくても知っているような)輝かしい名曲群の数々をかけた様だが、先週放送の60年代編は半分以上、アーティスト名・曲名がわかりませんでした(笑・しかし自分の勉強不足は否めず。さすがに、イントゥルーダーズやジェリー・バトラー、ソウル・サヴァイヴァーズ(好きです!)は知っているが)。それだけに、聴きたかった・・・。


 その60年代編の中でも、1曲だけ71年度作品(シングルリリース年度)がラストにかかったようだ。その曲は、エボニーズの「You’re the reason why」。2年後に出された1stアルバムのラストを飾る名曲だ。


 (曲の)出だしからクライマックスのような幕開け。MFSBが奏でる、ストリングスの洪水の中から、突き抜けるファルセットと力強く放たれるバリトン・ヴォイス!実に圧巻である!この曲だけ、ストリングスが普段の2割増なんじゃないか?と思わせるぐらい弦音が分厚い。そしてさらに、豊潤なコーラスが淀みなく、そして美しく、歌われる。号泣必至のスウィート過ぎる名曲である。そして、この曲は3分8秒と短く、聴く側に「もう終わっちゃうの?もっと聴きたい!」という気持を起こさせる、腹八分目的な(なんだそりゃ・笑)名曲でもある。


 このアルバムは「You’re〜」だけでなく、他の収録曲も皆素晴らしく、奇跡的に捨て曲のないアルバムである。さすが、ほとんどの楽曲を書き、1曲を除く全ての曲のプロデュースをギャンブル&ハフが手掛けているだけはある。しかも自分たちで、自身のレコード会社(ギャンブル&ハフがつくった「フィリー・インターナショナル」)にスカウトしたというから、やはり力の入れ具合いが違う。


 しかし、このアルバムは売れず(何故だ!)、このアルバムも長く幻の存在だったという。名盤だけに、なんという不幸であったことか。


 ところが今では、フィリー・インターナショナル期のアルバム未収録シングル曲をも納めた1stのCDが再発され(ソニーからの日本盤なので、とても手に入りやすい状況)、再び日の目を見る機会を得ている。


 フィリーソウル初心者には、オージェイズ、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ、スリー・ディグリーズはもちろんであるが、このフィリーソウルの精髄(MFSBの華麗で洗練を極めたサウンド、ファルセットを多用したスウィートで美しいコーラスなど)が見事に刻み込まれた、エボニーズの1stを勧めたい。