ガイに踊らされ、松江さんに後押しされる

松江さん『作り手ならつぶやくよりも人がつぶやきたくなるものを現在は目指すべき』


映画監督・松江哲明氏がブログをやめるという。
正確には、日記的な内容を止め、今後は告知のみにするそうだ。
饒舌な氏の文章には、数え切れないくらい触発されてきたが、
今回の宣言にも、個人的には背中を押された感がある。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


迎えるべき日のために、今まで爪を研いで来たんだ。

あれは21歳の頃だった。
朝から晩まで音楽に淫していた。
そのうち、音楽好きの端くれとして、自分で作品を作り出したい願望が募り、
紙切れに詞を書き留め、鼻歌で曲をつけるという
作品づくりのマネゴトを試してみたりした。
当然ながら、なかなか思うようには行かず、イライラする中、
オリジナルラブの『Let's go』を聴いて、愕然とした。

曲は中庸ながら、生命力みなぎる言葉の力強さ、クールを装いながら
グツグツ煮えたぎるグルーヴで迫る演奏。
後ろからすっと現れ、目の前を簡単に歩いて抜かれていくような感覚に、
何にも作り出していないうちから『これはかなわないや』、と思ってしまった。

特に、存在感のある言葉を畳み掛け、洗練された音像にある意味似つかわしくない
愚直な程ストレートなメッセージを、
ためらわずに投げ付けてくるボーカル/ソングライターの田島貴夫の迫力に
完全に屈服してしまった。

自分を振り返り、自身の人生経験とリスナー経験が圧倒的に足りない、
という分かり切った結論に至った。

単純に、そんなの関係ねーから作りゃーいいじゃん、てな事だが、
それが出来たらこんな事思わない。
人なんて関係ない、と思うようになるのは、それから大分先の話しだし。
今だって、そんな変わってないけれども…。

21歳の頃から十数年の時が過ぎ、未だに音楽に淫している自分が居る。

田島貴夫があの時歌っていた。
「君のチケットをつかめ」と。

きっかけは多々あれど、それを掴むか掴まないかは、自分次第なんだ。

自分で発信していかない限り、この先何も変わらない。
ただ繰り返し後悔するだけだ。

俺は掴むよ。