「Ray/レイ」(2005年作品/アメリカ)
・・・壮絶な半生。音楽家としての無敵っぷり。その逆、トラウマに怯え、薬物と女性に溺れて行く姿。どちらもエネルギーを放出しまくっていて、生きているリアリズムを眩しいほど感じさせる。逞しい。ジェイミー・フォックスは「レイ」そのものでした。口パクだろうが何だろうが、バンドとレイレッツを従え、「ホワッド・アイ・セイ」を熱唱する姿に、身震いしました!!!DVDになってからでも良いから、遍く音楽好きは、観るべき。
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私が初めてレイ・チャールズを知ったのは、御多分に漏れず、サザン・オールスターズの「いとしのエリー」のカバーから、でした。当時中学生だった私は、殊勝にも「原曲よりいいね」などとのたまっていましたが(今はどちらも好きです)、友人から「レイ・チャールズなら、こっちの方がいいぜ」と教えてもらったのが「愛さずにはいられない」でした。カセットデッキで聴いたその曲は、肝心のレイの歌声よりも、壮大なバック・コーラスばかり耳に入ってしまい、正直「レイ・チャールズの曲」としてはピンと来ませんでした。のちにFMラジオでこの曲を再び聴く事になるのですが(ブルーハーツのマーシーがかけていた)、唐突にかかったその曲に、猛烈に感動してしまったのを憶えています。
(※写真は「愛さずにはいられない」収録の名盤「Modern Sounds In Country and Western Music」(1962年作品)。)
そして数年後、たまたま観た深夜のTVで、和田アキ子のスタジオでのアンプラグド・ライブに遭遇しました(まさに、アンプラグド・ブームの頃です)。そこでは、和田のルーツであるソウルのカバー曲を披露していました。曲は「アンチェイン・マイ・ハート」。グッと重みのある、抑制の効いた和田の渋い歌声。普段TVで観ていた和田となにか違う!!!・・・「ソウル」を感じる。めちゃくちゃカッコ良い!!!聞き覚えがあるが、原曲は一体誰の曲だろう・・・レイ・チャールズの曲だった!!!原曲を聴いたのだが、ラテン風のリズムを用いたその曲は、めちゃくちゃクールかつ熱く、素晴らしい歌唱、素晴らしい演奏にすっかりやられてしまった!!!
(※写真は和田アキ子「PERFECT COLLECTION」(1993年作品)。しかし、ここには入ってません(すみません・・・))。
さらに数年後、ソウルやファンクなどの黒人音楽にのめり込むとともに、昔の日本のロック・ポップスにもハマり始めた頃、上田正樹とサウス・トゥ・サウス「この熱い魂を伝えたいんや」(1975年作品)の存在を知りました。「日本のソウル???」・・・恐る恐る買い求めたが、それは取り越し苦労でした。まさに「日本のソウル」。最高だった!!!上田正樹の歌には、ソウルへの、そして音楽への愛が溢れていました。そこではオリジナル曲の他に、カバー曲も披露されているのだが、そこに、あのレイ・チャールズの「ジョージア・オン・マイ・マインド」が・・・。長きに渡り、じっくり、大切に、歌い込まれてきた感のある上田正樹の歌唱が素晴らしかった(レイの歌唱を彷彿とさせた)。こんなところでもレイの歌にめぐり逢えるなんて、とレイのとてつもない大きな存在を実感しました。(※写真は上田正樹のベスト盤。)
そして今では、私は、巨大なレイの足跡を辿り、直に作品に触れるようになりましたが、そのどれもが素晴らしく、ある時は熱狂、ある時はうっとりとするような曲たちにいちいち圧倒され、心底やられまくっています。そんな素晴らしい作品群を我々に残してくれたレイを、「愛さずにはいられない」と思う私です。